映画 『殺人の追憶』 (2003年・韓国)

この映画は 1986年から1991年の間
軍事政権のもと 民主化運動に揺れる韓国において、
実際に起きた 未解決連続殺人事件をもとにした フィクションです

その一文から始まった『殺人の追憶』
未解決事件を取り上げた映画やドラマでは、
たとえば3億円事件などでも、犯人が誰かを設定してるように、
この映画もそうなのかな?と思い、推理映画と見てました。
しかし犯人は誰?ではなく、
ソウルからやって来たソ刑事(キム・サンギョン...今彼が出てる「真実のために」視聴中)
変わっていく様子が、心理サスペンスという感じでした。
段々と壊れていく様は、アメリカ映画『インソムニア』の、
アル・パチーノを思い出しました。
DVDの音声解説で、監督さんが話してましたが、
痩せて、すさんでく様子がいいと。そうそうと納得です。

ラストはコワイシーンではないけど、妙に寒気がくるような。。。
パク刑事(ソン・ガンホ...「シュリ」「JSA」「グエルム」など) 、さすがの表情でした。

ずっと張り詰めた雰囲気で息つかせずに見ました。
俳優さんたちは、みんな役にピタっとハマっていて、
やはり韓国の俳優さんは上手いと実感。
ただし、遺体の状況はグロテスクなので、そういうのが苦手な方は注意、
暴力シーンが嫌いな方も、ダメかもしれません。

音楽は、日本の岩代太郎さん。
時には不安にさせ、時には不気味なに聞こえ、物静かで悲しくもあり、
素晴らしいBGMでした。
岩代さん、最近では映画「血と骨」、大河の「義経」のもの悲しさが印象深く、
他には「氷の世界」や朝ドラ「あぐり」など、思い出します。
最近日本で公開された『トンマッコル…』は久石譲さん、
日本の作曲家が韓国の映画でも活躍するのは、日本人として嬉しいです。



以下、内容に関するネタバレです。未見の方はご注意!!

本当に、こんな事件があったのですね・・・酷いです。
田舎町で起きた殺人事件、
田舎だから、野次馬は多いし、
現場保存など出来てなく、トラクターで痕跡を踏み潰してしまうし、
もっとちゃんと現場保存が出来ていれば、
犯人の痕跡が見つかった可能性もあったのかな?

同棲相手から、二人目の犠牲者を追い掛け回してた男・クァンホ
の存在を聞いたパク刑事。
クァンホは顔にヤケドの跡がある、頭が弱い男。
あんな残忍な事が出来ると思えない雰囲気の男だけど、
クァンホを犯人にして、ケリをつけたい捜査陣。 
自白させるために、蹴りつけるチョ刑事。
靴がすりむけるからと、わさわざ足先に靴カバーまでするし・・・(-_-;)
この時代、拷問させて吐かせるのは、当たり前の事だったのでしょう。
後のシーンでは、逆さ吊りも・・・
冤罪も多いし、ささいな事でぶち込まれた人も多いと聞いてます。
パク刑事は、クァンホの靴で現場に跡をつけて写真を撮り、証拠写真にーー
呆れてしまうけど、刑事達は、それでいいと信じてたのでしょう。

現場に連れて行き、誘導尋問気味に問い詰めるるうちに、
「ヒョスクの首を絞めた…」と口走るクァンホ。

そんなやり方を、少し離れて、苦々しそうに見てたソ刑事。
被害者の写真を見て、クァンホのくっついた指では、
遺体の手を縛るのは不可能と気付き、実況見分を止めるようにいうけど、
ギャラリーも大勢いるから、もう後には引けずに続行した課長。
父親の姿を見たクァンホは、大勢の前で「やってない」と叫び、
大恥をかいた捜査陣。
(その前に意気揚揚と呑気に記念撮影してたのが笑える…)

クァンホは釈放されて、担当の課長(「グエルム」・「1%の奇跡」会長」他)は更迭され、
新しい課長がやって来ました(「美しい彼女」のトレーナー・「ピアノ」院長)

ソウルから派遣されて来たソ刑事は、クァンホの指に気付いた他にも、
事件の共通点は、「美人・雨の日・赤い服を着ていた」と。
ただの失踪事件と片付けられてた女性も、この事件の被害者と見て、
二つの現場から、遺体のある場所を突き止めて、言った通りに遺体が。
書類や証拠から、事件の本質を割り出すソ刑事、さすが~でした。
当然、今までのやり方が正しいと思ってるパク刑事は、
そんなやり方が気に入らないし、ソ刑事も、ここでのやり方は気に入らず。

雨の日におとり捜査をしたけれど、
その日犠牲になったのは、工場にいる夫に傘を届けに行った女性。
怪しい気配を感じで、懐中電灯で照らした先には、
工場があったのに・・・可哀想なシーンでした。
そして、この時、女性は赤い服を脱いで行ったのに…
もう犯人は赤い服には拘らなくなってましたね。。。

女性刑事が、いつも聴くFM局で、『憂欝な手紙』という曲が流れた時に、
殺人が起こっていると気付きました。
ハガキに指紋が残ってるかもとラジオ局に行くソ刑事、ゴミをあさり、
ゴミ焼却場まで行くけど、見つかりません。 

ソ刑事が見張ってたところに現れた、変態風な男。
逮捕したけれど、中々吐きません。
この男の「学校のトイレの…」と話しに飛びつき、学校のトイレに行ったソ刑事、
そんなところにも糸口を見つけようと、少しずつ壊れていってる様子です。
でもこの学校教師の話から、
学校裏の家に住む、生きていた被害者を発見。

この女性の供述、「犯人は、女性のような柔らかい手」
変態男は女性のような手ではないから、犯人ではない・・・
そして『憂欝な手紙』が流れ、雨も降って来て。。。また殺人が起こりました。

ハガキの住所から、パク・ヒョンギュ(パク・ヘイル「グエルム」次男)が容疑者に。
華奢で、いかにも女性のような手をしてそうで、
涼しげな警察を軽蔑したような目。
何とも怪しげで、この役にピッタリです。
しかし、何も知らないと言うパク・ビョンギュ。

現場でクァンホが自白したのは、セリフの練習をさせたのではないと知り、
という事は、クァンホは犯人を見てる。。。と気付いたソ刑事。

クァンホを待ってる間、店のテレビで流れてた元刑事の裁判を見て、
暴れ出すチョ刑事。(彼は止められてた拷問をして課長に叱咤された後)
そんな様子を見たクァンホは、思わず棒でチョ刑事の足を殴り、
その棒に刺さってた釘が足を・・・痛がるチョ刑事を見て、
自分のした事に怯えて、逃げ出してしまったクァンホ。
暴れるチョ刑事に、自分が拷問された時を思い出したのでしょうか?

この後、この傷が元で、破傷風になり、足を切断したチョ刑事。
そして、怯えて電柱に上ったり、そして列車に撥ねられてしまったクァンホ。。。
転がってたクァンホの履いてた靴
=パク刑事が買ってあげたナイキのニセモノが、悲しげです。
ああいう暴力的なやり方をしたせいで、
証人を無くしてしまったような感じもし、何とも。。。

パク・ビョンギュを見張っていたソ刑事、ついウトウトとした時に、
バスに乗って行ってしまいました。追いかけようとしても車はエンスト。

その夜、被害にあったのは、ソ刑事と何度か顔を合わせてた女子中学生。
犯人は最初、パク刑事の同棲相手に目をつけてたのだけど、
ふと、女子中学生に目が留まり、標的が変わったのでした。。。
何とも恐ろしい、運命の分岐点です。

段々と壊れ掛けてたソ刑事が、顔見知りの女子中学生の遺体を見て、
最後のタガが外れてしまったような。。。
遺体には、自分が貼ってあげた絆創膏が・・・悲しいです。

降りしきる雨の中、パク・ヒョンギュを殴る蹴るのソ刑事。
あれほど、暴力でカタをつけるここのやり方に反発してたソ刑事が。。。
しまいには銃を取り出して突きつけ、「お前が殺したと言え」と。

被害者の服に残ってた体液から、
DNA鑑定に出してた結果を持って来たパク刑事。
開けてみると・・・「不一致」
書類が全てを決めると信じてたのに、アイツが犯人だと信じてたのに、
ガラガラと音を立てるように崩れ、すべてを否定されたように、
ただ呆然と「間違いだ…」と呟き、雨に濡れた顔に、涙が流れるソ刑事。
この時の表情が、とても上手かったです。

ハラリと落ちた鑑定書は英語で読めず、状況がわからないパク刑事。
それでも問い詰めたパクの目を見て悟り「行け」と。
列車が来て、鑑定書は破れてバラバラになり、
トンネルを逃げるパクに銃を撃つソ刑事。
それを止めたのは、いつも暴力でカタをつけていたパク刑事でした。

2003年。パク刑事は刑事を辞めてセールスマンに。
あの同棲相手と結婚して、子供も2人。
久しぶりに事件の村を通りかかり、現時の用水路に立ち寄り、
あの日と同じように、覗きこむパク刑事。
すると通り掛かった少女が、少し前に、同じように見てた人がいたと。
どんな人と聞かれ、「よくある顔。ただ、普通の顔」と話す少女。
愕然とするパク刑事。。。

普通の顔した男が、今も生きていて、普通の生活をしている…
未解決事件を追え!とか、もうすぐ時効などのニュースを見れば、
罪を犯しながら償わずに生きてる人が、すぐ傍にいるのかもしれない…と
ふと思うのだけど、そういうのを実感して、本当にコワイ。。。

ソ刑事は、一体どうなってしまったのでしょう。
刑事を辞めてしまった気がしています。

DVDに収録されてる、ポン・ジュノ監督、
ソン・ガンホ、キム・サンギョン、クァンホ役の俳優さんの音声解説が、
裏話あり、こだわりのシーンあり、反省もあり、面白いです♪


殺人の追憶
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この記事へのコメント

2006年11月13日 00:15
pandaさん、アンニョン♪
私もこれ見ましたよ~、色々考えさせられた映画でした。
ソンガンホの圧倒的な存在感がすごいなぁ~と!そして犯人では?のパクヘイルの透明感のある存在がかえって怖かったかも。多分犯人なのだろうな?と思わせながら違うという判定が下ったあたりは当時の検査結果の精度がどこまでだったのかと思いました。
2006年11月13日 11:11
pandaさん、こんにちわ

犯人を独自に割り出していくと思っていたのでとっても意外でした。パク・ヘイルかなり怪しいけど・・。
けれど終わったあとの背筋ぞくぞく度はほかの作品より勝ってました。最後のソン・ガンホの表情が忘れられません。
音声解説いいですね!聞いてみたいです~

当時の捜査方法怖いですね、昔はずさんなことが多いようで驚きです。
2006年11月13日 23:20
so-so♪。さん、アンニョン♪
犯人はパク・へイルじゃないと否定されて終わったけど暴力で取り締まる警察への軽蔑の目や、色々な証拠から、犯人と描きたかった感じがしますよね。
あの体液は、今まで痕跡を残さなかった犯人のものではなく、恋人とかのだったんじゃ?と想像しました。当時のDNA検査の精度も、わからないですよね。しかし…コワイ事件だわ。。。
2006年11月13日 23:43
cocoansさん、こんばんは。
私も、フィクションでも犯人はこの人と白黒つくと思って見てました。だから、パク・ヘイルが捕まって終わりかと。彼は犯人っぽいですよね。ハガキや中学生の殺された時に家にいなかったとか。何よりあの独特の雰囲気が、いかにも・・・
ソン・ガンホ、キム・サンギョン、パク・ヘイルなど、それぞれのキャラの心理が、うまく描かれてたなぁと納得の映画で、最後は身近に潜んでる…と怖くなりましたよ。
当時の、軍事政権下での、拷問&強制の自白は驚きますよね。現場保存もそうだし、そうじゃなかったら、犯人は?と思ったりします。
音声解説は、ソン・ガンホはベットシーンが初めてだったとか、面白いですよ~機会があればぜひ♪
2006年11月15日 22:31
書き出しが同じだわ(苦笑)。

今年の初めにテレビで、9月にYahoo!の配信でと2回見ました。
オリジナルが舞台劇なのだそうで推理というより人間模様に重きを置いた作品です。
拷問や冤罪は無理ないのだと思います。
韓国だからというのではなく軍政下の元では。
その犠牲になった人々の声も民主化を叫ぶ中には含まれていたのだと思います。

「犯人は、女性のような柔らかい手」と言うのを聞いてエラリー・クィーンを思い出してしまいましたが、現実でも劇中でも真相は謎のまま。

最後の少女の言葉は怖かったです。
2006年11月16日 21:48
sannkenekoさん、
TVHで放送されたんですよね~うちは受信出来なくて、テレビ雑誌を見て興味を引き、ようやく見れました。
拷問や冤罪は、昔の日本もそうだったと見聞きしてますが、軍政下ではあんな感じなのでしょうね。それほど昔でない時にお隣の国・韓国がこうだったとは、映画やドラマで知り、恥かしながら当時の私は知りませんでした…

エラリー・クイーンは、残念ながら読んだ事ないのですが、女性のような柔らかい手を持ってそうなパク・ヘイルで決まりと思ったら、違っていて。今でもどこかで、生きているのかしら…
最後の少女の「普通の…」というのが、妙に恐ろしかったです。

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  • 「殺人の追憶」(韓国 2003年)

    Excerpt: 『この映画は1986年から1991年の間軍事政権の元 民主化運動に揺れる韓国において、 実際に起きた未解決連続殺人事件をもとにした フィクションです。』 Weblog: 三毛猫《sannkeneko》の飼い主の日常 racked: 2006-11-15 22:08