映画 『地下鉄(メトロ)に乗って』 (2006年/日本)

姓まで変えて、父と絶縁状態の真次(堤真一)。
ある日、地下鉄の階段をあがると、
その先にいたのは、死んだハズの兄。。。
急いで追いかけると、そこは昭和39年の当時住んでた町で、
地下鉄のプラットホームで偶然会った恩師(田中泯)から、
「君が変わったのは、あの日以来」と言われたあの日だったのでした。

タイムスリップし、過去の父と出会い、
過去の父の生き様を知って行く・・・そんな話だと思ってました。
そしててっきり地下鉄に乗ってタイムスリップするのかと思ったら、
階段あがって…とか、眠ってる間とか色々パターンがあって面白かったです。
確かに根っこはそういう話ですが。。。
色々な方のレビューを読むと賛否両論。
やはり、あの方の行動には納得行かないという意見が多いようです。
確かに受け入れられない人には、絶対にダメな映画かもしれません。
映画公開時に、偶然にも展開を知ってしまった時は、
私、共感出来るのかしら?と思ったのだけど、
その行動には心打たれてしまいました。。。
この映画は、知ってから見て良かったような気がしています。

主役級の四人が、役にハマっていて、本当に良かった!
真次役の堤真一は、日本アカデミー最優秀主演男優賞を取った「三丁目の夕日」の役よりも好きです(個人的意見なので様々でしょうが)
初めてタイムスリップした時に、死んだハズの兄と会った時の、
みるみると涙が溢れていく表情や、
父の人となりを知るうちに、心のわだかまりが解けて行く様子に
すっかり感情移入してしまって、
若き日の小沼佐吉を見るたび、堤さんと一緒にウルッとしてました。
出征の時の「バンザイ」が良かった・・・
「あなたのような父親を持って本当に幸せでした」も・・・

小沼佐吉役の大沢たかおは、本当に色々な世代を演じ分けていて凄い!
最初の登場シーンは、中年くらいの年代だったのだけど、
少し柔らかい声のトーンの彼が、妻を怒鳴りつける声は低い憎憎しい声で、
おお!これは息子たちも嫌うような厳しい親父そのものーーと思いました。
よく予告などで流れてた戦後の姿も中々だったし、
何より出征する時の若き日の佐吉が、
素朴な青年の姿で初々しくて、驚きました。(ホントに坊主にしたらしい)
話し方もゆったりとして工夫してたし、これまた声のトーンが、少し前に見た「星の金貨(1996年製作)」の秀一さんと同じ…とちょっと感動。。。




以下、ネタバレ含む感想です。

   ↓   ↓   ↓









最初にタイムスリップした時に、その夜死ぬ運命の兄と会った真次。
事故に遭わないように、絶対に外出しないように…と念を押すのだけど、
現代に戻ってみると、何も運命は変わってませんでした。
その話を聞いた会社の社長は、
「運命を変えてしまったら、ひずみが出来る」と。
↑このセリフは、ラストにはどんなひずみが出てしまったんだろ?と
色々と考えてしまいましたが・・・

その後、戦後にタイムスリップして、アムールと名乗る男と出会った真次。
(その時は父と気付かなかったのかな?と私は思いました)
米兵相手の闇取引を手伝わされたりしたけど、
仲間に言わせると、「アムールが人と組むのは珍しい」のだそうで。
真次に対して、何か感ずるものがあったのかしら?
昭和39年のお兄さんも、真次にすぐ打ち解けていたし。

次に出会った時は、戦中の地下鉄の中。
若き日の佐吉を見て、声を掛けようとして、
たすきに書かれた「小沼佐吉」の文字を見て驚いてたので、
この時、アムール=父と気付いたのかな?と思ったのだけど、
出征すると気付いたから、驚いたのかもしれません。
純朴そうな佐吉少年は、工場仲間から「メトロ」と呼ばれてるけど、
実は一度も地下鉄に乗った事はなく、それは工場仲間達も知っていて、
仲間たちがお金を出し合って、乗せてくれたのでした。
初めて座るシートに、感動しながらも、もう二度と座ることが出来なないかもしれない(生きて戻れないかも)思いで、悲しげな佐吉青年。
「将来子供が出来たら、長男は帝大へ、
次男は勤め人、三男は出来が悪いだろうから傍に置きたかった」と
もう叶わないかねしれない夢を語る佐吉に、
「大変な思いをするだろうけど、必ず生きて帰れる」と励ます真次。
自分が慕ってる工場の女性が縫ってくれた千人針があるし…と見せる佐吉。
この女性が母だと気付いた真次は、
父がずっと昔から、母を愛してたと知ったのでした。
地下鉄を降りた父に涙ぐみながら、「小沼佐吉バンザイ」と叫ぶ真次。
ここの地下鉄のシーンは、何だかジーンと来ました。。。

現代に戻り、母に千人針の事や父の事を聞くと、
「私には好きな人がいた。帝大の人」と答えた母。
わざわざそんな事いうなんて、なんとなくだけど、
真次に「兄の死は父親が悪いんじゃない」と教えてるようにも聞こえました。

真次とみち子は終戦直後の満州にも、タイムスリップしました。
そこには、軍に見捨てられた子供達と教師と、
その人たちを庇うように励ますようにしてた父・佐吉がいました。
自決するのに手榴弾が欲しいという先生
(現代のプラットホームで会った真次の恩師)に、
自分が囮になるから、その間にみんなを連れて逃げるようにと言い、
敵軍の中へ飛び出していく佐吉。
占い師から、生きて帰れると言われたからと言い残して・・・
自分の命が犠牲になってでも、みんなを助けようとしてた父。
真次が地下鉄で佐吉に言った言葉は、
佐吉の生きる希望だったのかもしれません。
そうそう、あの千人針もちゃんとしてました。

最後にタイムスリップしたのは、昭和39年、兄の事故があった夜。
帝大へ行けという父と喧嘩になり、結局家を飛び出した兄。
電話ボックスから母に電話すると、
「お父さんは本当の父親じゃないけど、息子として育ててくれた。
嫌ってるわけじゃなく、お前を思って帝大へ行けと言ってる」という母の声。
それで呆然としたまま車道に出てしまって事故に遭ったのでした。
父が実子じゃない兄を育ててくれていた・・・と知った真次でした。

最初にも書きましたが、みち子の出生の秘密を知っての鑑賞でした。
映画を見る時は、ネタバレを避けて新鮮な気持ちで見たい私だけど、
今回は知ってたから、かえって良かったのかも?と思えました。
最初に真次がタイムスリップした事を会社で興奮気味に話した時、
社長が「姓を変えても小沼佐吉の息子」と言ったのを聞いたみち子。
その時の会社でボーっとした姿や、
「小沼佐吉の息子だったのね…」と寂しく告げた時、
その夜、うたた寝してしまった真次の手を握ってる表情が切なく感じたし、
その後の、真次が触れようとする時に避けるような雰囲気や、
なぜみち子までタイムスリップして、小沼佐吉と出会っているのか・・・と
納得して見る事が出来た気がします。

雨の中、「行きましょう」と、真次の手を繋いで家に向かっていくみち子は、
もう覚悟を決めてたようにも見えました。
バー・アムールにいたのは、お腹の大きなおトキ。
「私は母の作ったオムライスしか食べない。
うちはケチャップ掛け放題と」と言ってたみち子が、
おトキの作ったオムライスに、ケチャップをたくさんかけて食べる・・・
ここもみち子とお時の関係を知らないと、ピーンと来なかったかも?

バーに現れたのは、小沼佐吉。
兄の死を嘆き「俺は何て事してしまったんだ…」と慟哭する姿、
(ここは大沢さんに演技に泣けたーー
そして「長男は帝大に…」と出征時に聞いたのと
同じ事を泣きながら話す父の姿に、
あの夜、兄の遺体を見て悲しまない父にヒドイ言葉を投げつけた真次だったけど、
父の一言一言が、真次の心に突き刺さっているようです。
今までの数々のタイムスリップで父に触れ、
極悪非道な父親だと思ってた父は、
実はとても暖かいものを持っていて、人の為に生きて行く人だった。。。
自分達を愛してくれてた人だった。。。
父の一部分しか見ずに、否定して生きて来た真次。
泣いてる父に、「きっとこう言ってくれるでしょう。
“あなたのような父親を持って本当に幸せでした”と」と
自分の気持ち、そして兄が思っただろう気持ちを伝える真次でした(:_;)

お腹の大きなおトキに「産まれたらみち子と名付けよう」と話し、
この子はどんな子になるのか、手に職をつけて欲しいとか
幸せを願う父と母の会話、
自分は二人に愛されて生まれて来たのだと、うれし涙が溢れるみち子。
幼い頃、お父さんに家に来て欲しいと願ってた毎日、
自分は望まれない子じゃないのか…と思い続けていたんだろうなぁ。。。

そして真次は、みち子が佐吉の子と知って驚き・・・
しかし驚いてる間に、みち子の決意は。。。

傘を差しかけて見送ってくれる母を抱いて、階段を転がり落ちるみち子。
母ならきっとわかってくれる…そんな表情にも見えました。
愛する人=真次のために、
母の子お腹の子を流産させて、自分の存在を無くすために・・・(T_T)

ここは、後味が悪いと感じる人も多いのだと思います。
でも真次の腕の中で消えていくみち子の表情はとても安らかで、
人はいつか死ぬのだととしたら、愛する人を苦しませないために、
幸せになってもらう為に消えてしまうのだから、
それはみち子にとっての幸せだったのでしょう。
近親相姦だと知ったら、きっと苦しむだろう真次のために。。。
でもとっても悲しい選択です。

みち子も可哀想だけど、何も知らないお時も可哀想です。
階段落ちの前に、「お母さん」と呼びかけたみち子に、「何?」と答えたお時。
落ち着いたら、あの子はお腹の子が出て来たのかな…
と納得してくれるのかもしれないと思いました。

腕の中でみち子が消えたのと同時に、現代に戻った真次。
しかし会社にはみち子の存在はなく、デスクには別人が。
そして何日か経ったのか、ある日ポケットから出て来たのは、
あの最後のタイムスリップ夜、こっそりみち子が入れた指輪が。
それを見て不思議そうな真次。 もうみち子の記憶はないみたいです。
でも何かを置き忘れてしまっている・・・そんな表情の真次でした。
真次は、みち子がいなくなった瞬間は悲しんだけれど、
妹と通じてしまった事で苦しむ間もなく、記憶から消えてしいました。
みち子の願いどおりに。。。という気がします。

ずっと足が向かなかった父の入院先へ行くと、
テーブルには、タイムスリップした時に、お礼に渡した時計が。
佐吉はこの時計をずっと大切にしてたのね。。。(;_ヘ)ウルウル

父のお墓参りの後、弟に「ありがとう」と告げる真次。
長男は帝大、次男は勤め人、三人は傍に置くと言ってた父の夢、
三男だけが父の思いを叶えてくれた事へのお礼だったのかもしれません。


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この記事へのコメント

のり
2007年05月14日 09:30
pandaさん、お久しぶりです~。
お元気ですか?私は今は雪の女王(字幕)と春の日、明朗少女成功記を視聴中です。同時期視聴作品にまたお邪魔させていただきますので、よろしくお願いいたします~!!

電車自体がトリップするのかと思っていたので、あらら~という感じでした。トンネルのシーンはないと駄目でしょうか、突然すぎて、どうして過去に引き戻されるのかがわかりずらかったです。映像はとても綺麗でもの悲しく、懐かしく、心に残りました。話題の岡本綾、不倫か~という感じでしたが、特にラストの消える決断はしなくてもよかったのでは?と最初に見たときは思いました。自分の中で異父兄妹がひっかかるのでしょうか?けれど「母の幸せと愛する人の幸せ」が決め手でああなったのでしょう、そうかな~と考えてしまいました。アムールに愛人がいても、過去の父に会えたシンジなら大丈夫と思うのですが・・・。それにしても「伏線」だらけの脚本でしたね。個人的には良かったです。コメディ路線の堤真一が1カットもなく、終始カッコイイ堤真一がまた良かったです~。
2007年05月15日 10:34
のりさん、お久しぶりでーす♪<(゛ー^)ノ
岡本綾の不倫はタイムリーですよね。今は下火でもつい思い出しちゃいます。
みち子の選択は、母が「愛する人の幸せ」と言ってくれた事で安心して実行したようでした。真次を家庭に戻すことより、近親相姦の苦しみを取り除きたかったように感じました。それと母がアムールの子を産まなければ、彼の家庭は今ほど壊れないだろう→それは母にとっての「愛する人の幸せ」を祈る事なのよ…という意味合いもあったのかな?とも思います。
この映画賛否両論だけど、私も好きな映画です。堤真一、普通の男の役だけどカッコよかったですね~そして大沢たかおが良かったです!

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